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赤松 憲; 鹿園 直哉; 齊藤 毅*
Radiation Research, 183(1), p.105 - 113, 2015/01
被引用回数:19 パーセンタイル:64.42(Biology)DNAに生じた傷(DNA損傷)のほとんどは生物が有する損傷修復機構によって元通りに修復されるが、中には修復困難なタイプの傷があり、これが突然変異や発癌の原因になるといわれている。修復困難とされる損傷型のひとつに「クラスター損傷」(複数の損傷がDNA鎖上の狭い領域に集中的に生じている)がある。しかしながら、その化学構造・損傷局在性の程度・生成頻度等の実体はほとんど明らかになっていない。そこで我々は、クラスター損傷の実体、特に局在性を実験的に解明するために、蛍光共鳴エネルギー移動を利用した損傷位置局在性評価法(FRET法)の開発を行ってきた。検出対象の損傷には脱塩基部位(AP)を選び、FRET法を、種々の放射線(Co 線,ヘリウム・炭素イオンビーム)を照射した乾燥DNA試料に適用したところ、特に飛跡末端の炭素イオンビームでは、飛跡中でクラスター化した損傷が生じることが明らかとなった。
赤松 憲; 鹿園 直哉
no journal, ,
高LET放射線の飛跡周辺や二次電子の飛跡末端で生じやすいとされているクラスター損傷は修復が困難とされているが、その化学構造、線質・エネルギーの違いとの関係についてはほとんど明らかになっていない。そこで、脱塩基部位(AP)を研究対象とし、コバルト60線やヘリウム線、炭素線を照射した乾燥DNAフィルムに対して蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用したDNA損傷局在性評価法による分析を行った。その結果、線とヘリウム線のFRET効率Eは、両者の有意差はなかったもののAP密度の増加に伴って大きくなる傾向が認められた。これは、線量が上がるにつれて近接したAPが増加していくことを示している。一方、炭素線のEは線、ヘリウム線より有意に大きく、また、AP密度がゼロに向かう(すなわち極低線量になる)につれE=0.10付近に近づくことが明らかとなった。これは、炭素線のトラック1本でAPクラスターが「一気に」生じることを意味している。